第3章


 夢野発明センターに到着した。
「へえ〜、ここが発明センターですか。」
 珍しげに建物を眺める疾風。道中、彼はレイの研究に非常に興味を示し、レイの説明の一つ一つに大袈裟とも思えるようなリアクションを取っていた。
「こちらへどうぞ。」
 疾風を招き入れ、島とレイは各自の動物たちにエサを与え、夢野博士にも今後のことを頼んだ。
「これを用意しておいた。持って行きなさい。」
 そう言って博士がジュラルミンケースを持ってきた。中を開けてみると、ダイナブレスが5つと、発信機のようなものが入っていた。
「万が一の時のために、発信機を入れておいた。周波数を合わせれば、電撃戦隊のレーダーでも受信できるはずだ。」
 

 その発信機とブレスの入ったジュラルミンケースを持って、島たち3人は発明センターを後にした。
「レイさんの研究って、すばらしいですね!」
 来る時と同様、手放しでレイのことを褒めちぎる疾風に、レイは困惑気味だ。そんなレイをルームミラー越しに見やって、島も苦笑する。


 半分ほどの道のりを来ただろうか。そのとき、車の直前で爆発が起こった。とっさに島は、急ブレーキをかける。
 何事かと、あたりを見回していた3人に、どこに潜んでいたのか、ヒドラー兵が襲い掛かった。
 車から降り、ヒドラー兵相手に応戦する疾風たち3人。だが、襲い掛かってきたのはヒドラー兵だけではなかった。

「待って!人間よ!」
 レイが発した言葉どおり、多くの人間が、鉄パイプなどを持って、3人に向かってきていた。
その人間たちが恐らく、さらわれた人々であろうことを3人は悟っていた。

「人間相手には戦えない!一旦引くしかない!」
「どうやって!?こんな情況じゃ、引けないですよ!」

 人々が次々に鉄パイプで3人に襲い掛かる。必死に攻撃を避ける3人だったが、レイが負傷し、気を失ってしまった。
 そのレイを背にかばいながら、島は1人が振り下ろした鉄パイプをぐっと握り締めた。

「島…!島…!」
 ささやきかけるような声に目を上げると、そこにいたのは…

「南郷!じゃあ、やっぱり…!」
「奴ら、やはり人間に尻尾を生やすのは無理だって結論に達して、俺達を操る方針に変えたんだ。今、なんとか正気でいられるけど、そろそろ俺の方も限界だ。」

 操られまいとしながら、息遣いも荒く南郷が話す。島はポケットに忍ばせておいた発信機を南郷の襟元にそっと取り付ける。
「大丈夫だ。必ず助け出す。警戒は…?」
「夜は何も見えないからな…。かなり厳しい。それに地形が特殊だ。夜の闇に紛れれば何とか…。奴らの目的は進化…」

 そこまで言うと、ついに耐えられなくなったのか、南郷の形相が変わり、島に鉄パイプを思いっきり振り下ろした。 
 そこへ、疾風からの緊急連絡を受けたチェンジマンや弾、星川が駆けつけた。それを見た指揮官と思われる怪物が操っている人間達に撤退を命じた。


「奴ら、人間を操って何をするつもりなんだ?」
 剣から当然の疑問が発せられた。電撃戦隊基地に戻り、疾風たちは受けた傷の手当てを受けていた。
「進化獣…かな…?」
 つぶやくような島の言葉に、一同が注目する。全員が自分を見ていることに気づいた島は、言葉を続けた。

「さっきの人間達の中に、南郷がいたんだ。何とか操られまいとしながら、話してくれたんだけど、奴ら、最初は人間に尻尾を生やすために、たくさんの人をさらっていたらしい。でも、やっぱり人間には尻尾を生やすことはできないから、その人間達を操る方へ方針を転換したらしいんだ。最後に『奴らの目的は進化…』って言っていた。」

「『進化…』おそらく進化獣のことだろうな。」
「しかし、進化獣は全部、倒したはずだが…」
 合点がいかない風に弾と星川が顔を見合わせる。

「博士から預かった発信機を、南郷に付けておいたから、奴らの基地がどこにあるかはすぐに分かるはずだ。警戒は厳しいらしいが、闇に紛れればあるいは…。」
 島の言葉に、全員がうなずく。

 南郷に取り付けた発信機から、敵の基地が無人島「鬼ヶ先」にあることが判明。
その特殊な地形に、忍び込むための作戦会議が開かれた。
そして、剣・麻衣・星川、疾風・弾・レイ、大空・さやか・島の3方向から侵入することを決めた。


 漆黒の闇の中、に鬼ヶ先へ向けて、1艘のボートが竜神岬から走り出した…。
 また、同時に電撃戦隊基地からはシャトルベースも発進していた…。

         
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