第1章


 電撃戦隊基地に戻った5人は、行方不明者が出た海水浴場を地図上で確認し、その範囲を確認していた。予想以上に範囲は広く、人数も完全には把握しきれていない。そうしている間にも、次々にヒドラー兵によって海水浴を楽しんでいる人々がさらわれている。電撃戦隊にも焦りの色が浮かんでいた。
 そこへ、ゴズマからの通信が入った。
「チェンジマン!人々を返して欲しければ、竜神岬まで来い!」
 それだけを告げると、通信は一方的に切れた。竜神岬にさらわれた人々がいるのかどうかは分からないが、何らかの手がかりはつかめるはず。伊吹長官はチェンジマンを出動させた。

 指定された竜神岬までやって来たチェンジマン。天気があまりよくなく、風が強い。少し荒れ気味の海から波が岩に打ち付けられている。
「ここにさらわれた人たちがいるのかしら…?」
 風に乱される髪を押さえつけながらさやかが誰にともなく問う。
 そこへ、幾人かの話し声がしたので、5人は警戒し身構えた。やって来たのは男女4人だった。彼らを見て、さやかと麻衣は思わず声を上げた。
「レイさん…!」
 レイや3人の男性も驚いたように立ち止まる。
「ここは危険です。すぐに離れてください。」
 剣が4人に歩み寄って告げた。まもなくゴズマもやって来る。一般人を戦いに巻き込むわけにはいかないのだ。だが、返ってきたのは意外な言葉だった。
「あなた方も呼び出されたんですか。実は我々も呼び出されたのです。だから、ここを離れるわけにはいきません。」
 4人の中でリーダー格らしい男性―弾北斗はきっぱりと言い切った。
「え…?」
ドーン!!
 戸惑いの声と爆発音はほぼ同時だった。はっと振り返ると、ブルバドスを肩に担いだブーバと見たこともない男2人が立っていた。
「ブーバ!そいつらは何者だ!?」
 疾風が見知らぬ男たちに対して誰何の声を上げる。だが、ブーバはそれには答えず、まっすぐに弾たち4人を見据えた。
「貴様らがダイナマンか…?」
 それは問いかけと言うよりは確認だった。剣たちはブーバと弾たちを見比べながら、戸惑いの表情を隠せなかった。
「だったら何だと言うんだ?俺たちを呼び出して、一体何の真似だ?」
 弾もまっすぐにブーバたちを見据えて問いただした。その弾の腕をつかみ、レイが注意を促す。
「見て!あれ!」
 レイの指す方を全員が注目する。ブーバが連れている2人には尻尾が生えていた。そして、弾たち4人の驚きは尋常ではなかった。
「そんな…!有尾人!?」
「そう…。貴様たちに滅ぼされた有尾人一族、ジャシンカ帝国の生き残りだ。私は9本尻尾の帝王、アトンの息子キーラ!このベラと共に、ジャシンカ帝国の復興を目指す!さらった人間たちは尻尾兵にして、新たなジャシンカ帝国を築くために働くのだ!」
 キーラと名乗った男は高笑いしながら言った。
「その前に、貴様らを片付けてやる。ヒドラー兵、かかれ!」
 ブーバの命令で、ヒドラー兵がどこからともなく現れ、一斉に9人に襲いかかった。チェンジマンは変身し、応戦するが、いつもの戦闘時の3倍から4倍の数のヒドラー兵に苦戦を強いられる。
 
 一方、ダイナマンは…。ダイナマンとして呼び出されたのだが、変身して戦うつもりは全くなかったため、ダイナブレスを装着していなかった。当然、変身できない。ヒドラー兵の攻撃を避けるのが精一杯だった。尻尾兵とは全く違う戦闘員にどんどん追い詰められてしまう。それでなくても、ジャシンカ帝国を滅ぼしてからもう2年になろうとしているのだ。戦いの勘もまだ戻っていない。

 ダイナマンの不利を見て取ったチェンジマンは、各人のアタック攻撃でヒドラー兵を蹴散らした。形勢逆転を恐れたブーバは、キーラとベラを伴い退散した。ダイナマンを襲っているヒドラー兵も倒したチェンジマンは変身を解き、弾たちの前に立った。
「あんたたち、一体何者なんだ?ジャシンカ帝国とは何なんだ?」
 疾風に詰問されて、ダイナマンの4人は顔を見合わせた。チェンジマンの他の4人も同様に厳しい目でダイナマンを見つめていた。2つのグループの間に不穏な空気が流れる。
「それに答える前に聞いていいですか?あのブーバとかいう奴…彼は宇宙人なんですか?」
 1人、輪から離れ、はるか空の彼方を見つめながら、星川竜という男性が訊ねた。
「あいつだけではありません。大星団ゴズマの構成員全員が宇宙人です。」
 剣の返答を聞いて、星川は大きく息をついた。
「そうですか…」
「さあ、答えてもらおうか。ジャシンカ帝国とは何なんだ?」
 再び疾風に詰め寄られ、弾が説明する。
 2年前、突如地底から地上を征服せんとやって来た有尾人一族。その名の通り、尻尾を持ち、その尻尾の数が階級を表している。その有尾人一族、ジャシンカ帝国と戦うため集められたのが弾北斗、星川竜、島洋介、南郷耕作、立花レイの5人の戦士だった。チェンジマンのような公的な戦隊ではなかったため、ほとんどの人々はダイナマンやジャシンカのことは知らない。
「奴らの要塞ごと滅ぼしたはずだったんですけどね。生き残りがいたとは…。さっきまでは再び戦うつもりはなかったんですが、ジャシンカの生き残りがこの事件に絡んでいる以上、我々も皆さんと戦います。」
 弾の言葉に、ダイナマンのメンバーがうなずく。ただ1人、呆然と空を見上げている星川を除いて…。そんな星川の様子には気づかず、剣は伊吹長官と連絡をとり、ダイナマンの4人を基地へ案内する許可を取った。そして、9人は電撃戦隊基地へと向かった。


      
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