プロローグ
ある夏の日―。地球征服を企む大星団ゴズマの母艦、ゴズマードに2人の客人が訪れていた。その2人は人間と同じ姿をしていたが、違う点がひとつだけあった。彼らにはそれぞれ3本と6本の尻尾があったのだ。 6本尻尾で名をベラという者は、星王バズーに向かって言った。 「この方は、ジャシンカ帝国帝王アトン様の息子キーラ様にございます。故あってジャシンカを離れておりましたが、ダイナマンと申す者たちにジャシンカを滅ぼされてしまいました。」 ベラは続けて、どうにかしてダイナマン達を見つけ出し、父アトンと兄メギドの仇を討ちたいが、いかんせんキーラとベラの2人だけでは勢力が足りない。そこでゴズマに協力してもらいたいと願い出た。 ゴズマはジャシンカを滅ぼしたという「ダイナマン」に恐れを抱いた。チェンジマンだけでも手を焼いているというのに、この上また新たな敵が出てくるのは避けたかった。 「よかろう。ダイナマンとやらを倒すために協力しよう。だが、そちらもチェンジマン打倒に協力してもらう。それで良いな。」 バズーの言葉にキーラとベラは跪いて平伏した。いささか胡散臭げにこの2人の客人を見つめるギルーク、ブーバ、シーマだが、バズーの命令には逆らえない。しぶしぶであるが、キーラとベラを受け入れることになった。 そのころ、チェンジマンの5人は伊吹長官と戦士団の計らいで日帰りではあるが、海水浴に来ていた。海水浴場はまったく混雑しておらず、5人の他に5人のもう1グループが来ているだけであった。 「な?なかなか穴場だろう?せっかくだからのんびりしないとな。」 この海水浴場を提案した剣飛竜が得意げに言う。他の4人も満足そうにうなずく。早速着替えて海に入る男性陣。女性陣はビーチボールで遊び始めた。 翼麻衣が投げたボールが渚さやかの頭上を越えて行った。 「もう、麻衣!取れないわよ〜」 「ごめーん!」 ボールを追いかけて行くさやかは、もう1つのグループの唯一の女性がボールを拾ってくれたことに気づいた。 「どうぞ。」 「ありがとう。よかったら、一緒にやりません?」 さやかはその女性を誘ってみた。断られるかと思ったが、女性は喜んでさやかたちの輪に加わった。 「私、立花レイです。よろしく。」 レイを加えて遊んでいると、1人の男性が浮き輪を持って波打ち際で行ったり来たりしているのを見つけた。 「南郷さん、何やってるの?あ、ひょっとして南郷さん泳げないんだ?」 からかい口調でレイが言うと、南郷と呼ばれた男性はひどく狼狽した。 「ち、違うよ!」 そこに、先ほどまでサーフィンを楽しんでいた、青いパーカーを羽織った男性もやって来てからかいの目を南郷―南郷耕作―に向ける。そのため、意地になったのか南郷は海の方へと入っていった。 突然、南郷が海に沈み、悲鳴を上げながら暴れ出したのをレイが目ざとく見つけた。そばにいた青いパーカーの男性―島洋介の袖をひっぱり、南郷の方を指差す。 「島さん…!あれ!」 「南郷!」 島はすぐにパーカーを脱ぎ捨てて海に飛びこんだ。 島が全速力で南郷の元へ泳いで行くが、南郷の頭がどんどん海中に没して行く。そして、島が辿り着く前に南郷の体は完全に海に沈んでしまった。潜って南郷の姿を探すが、全く姿が見えない。 息をつこうとして、海面に上がってきた島の耳に岸からの声が届く。 「気をつけて!島さん!」 そのただならぬ雰囲気に自分の背後を振り返ると、とてつもなく大きな波が自分の方へやって来るのが見えた。避け様もなく、その波に飲み込まれ、島は岸の方へと押し流されてしまった。 波に押し流されてきた島を女性陣が助け起こす。異変を察知して、剣、疾風、大空も戻ってきた。 「どうしたんだ?何があったんだ?」 「この人たちと一緒の人が海に沈んでしまったの。それで助けに行こうとしたら、今の波で…」 剣の問いに麻衣が答えた。 「ええ?それで、沈んだって人は?」 無言で首を横に振るさやか。 そのとき、剣たちのブレスに本部からの通信が入った。レイたちから離れ、通信に応じる。それによると、各地の海水浴場で行方不明者が出ているらしい。いずれも、遊泳中に海中へと沈んで行ったという。そして、ヒドラー兵の目撃情報があることが寄せられていた。 「ゴズマめ…。一体何を企んでいるんだ…」 チェンジマンの休暇はここまで。至急基地に戻るようにとの命令が下った。 「レイさん。私たち、戻らなければならなくなったの。でも、きっと南郷さんは無事に助け出してみせるから、心配しないで。」 そのさやかの言葉にレイと島は顔を見合わせる。 「あなたたちは一体…?」 「地球守備隊の一員、とだけ言っておきます。」 そう言って剣たち5人は海水浴場を後にした。 「地球守備隊が動くのか…。どうやら、あの人たちにまかせておくしかないようだな。」 剣たちを見送って島がつぶやいた。 「そうね。…ねえ、弾さんと竜さんは?さっきから姿が見えないけど…」 レイが海水浴場を見渡す。彼らもさらわれたのではないか…不吉なことを考えてしまい、不安な色が顔に浮かんだが、こちらへ戻って来る2つの影を見つけ、その人物たちが誰かを把握すると、安堵の表情に変わった。 レイたちは南郷のことをその2人に報告。そして、4人も海水浴場を後にした。 |