いったいどっち?


『科学戦隊ダイナマン』における、最大の謎(矛盾ともいう)は、有尾人の尻尾の数について。

最初の頃は、尻尾の数は帝王の裁量でいかようにも変えられると言われていた。
現実の世界に当てはめてみるならば、昔の「石高」のようなものだろうか。
実際、第1話でダイナレッドに尻尾を切り落とされてしまった5本尻尾の王子・メギドは、父である帝王アトンに対し、
「自分の力でダイナマンに勝ち、その上で尻尾を元に戻してもらいたい」と言っていた。
また、第13話では、ジャシンカ暦7777年7月7日7時7分に不老不死の妙薬を作り出すことに成功すれば、
全員の尻尾を1本ずつ増やしてやる、とアトンは言っていた。
この2点から、尻尾の数は階級を示すのと同時に、その者の頑張り次第で尻尾の数は増やすことが出来るものと思われていた。
少なくとも、メギド王子は5本尻尾に戻ることが出来るはずだった。

だが、その尻尾について、とんでもないことが後に発覚する。
千年洞窟から復活したゼノビア将軍によると、「尻尾の数は生まれながらにして決まっていて、たとえ帝王といえど変えることは出来ない」というのだ。

「生まれながらにして決まっている」……。
これは大変なことだ。尻尾の数が多いほど偉い、とされる有尾人社会。
そして、そこには帝王が存在し、跡継ぎである王子までいる。
親子で尻尾数に4本もの差があるのだろうか(メギドは元々5本尻尾なので、それで計算している)?
さらに、帝王の妹の娘(キメラ)に至っては5本もの差があることになる。
「有尾人一の軍神にして偉大なる科学者」カー将軍と、帝王の座を脅かしたゼノビア将軍が7本尻尾。
もし、本当に「生まれながらに尻尾の数は決まっている」のであれば、後に帝王の座につくメギド王子は「9本尻尾の帝王」ではなく、「5本尻尾の帝王」ということになってしまう。
さらに、5本尻尾ということは、カー将軍やゼノビア将軍よりも格下ということになり、「帝王」が将軍よりも格下になってしまうのではないか。

現実的に考えれば、この矛盾は「レトロ遺伝子」を持ち出すために生じたものだろう。
そして、「尻尾の数にこだわらずに生きていく」ことをメギド王子に発見させるためのものだったのだろう。

「レトロ遺伝子」なるものが出てきたばかりに生じてしまった矛盾。
あるいは、先に述べたような「尻尾を元に戻してもらいたい」や「尻尾を増やしてやる」の発言がなければ、ここまで矛盾を感じることもなかっただろう。
それでも、「生まれながらにして尻尾の数が決まっている」のであれば、メギド王子も8本なり9本なりの尻尾数を誇らなければ、後に帝王の座につくことは難しいように思われるが……。

考えれば考えるほど、抜け出せなくなる有尾人の尻尾数の謎。
いちばんいい形に持っていくには、「生まれながらにして決まっているため、アトンにすらどうにもならない」というのはゼノビアの勘違い(記憶違い)、
レトロ遺伝子を発見した際のカー将軍の「私は8本尻尾に、キメラ王女は6本尻尾、7本尻尾も夢じゃない…」というようなセリフは、「アトンの意思に関わらず、自分が望む尻尾数になれる」という意味に取りたいところだ。
そうすれば、全ての辻褄が合う。


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