The ties between mother and child, and their happiness.

 今まで、俺たちの間で家族の話が出たことはなかった。
 だから俺も話さなかった。母親がいないことが知れるのが怖かったのだ…。
 
 俺が生まれてすぐに亡くなった母親。
 写真でしかその姿を知らない母親。
 母親がいないことが不幸だと思ったことはない。
 だが、周りはそうではなかった。
 ことあるごとに「お母さんがいなくて可哀想」というような言葉をかけられた。
 そのときの俺はどう反応していたのだろう。
 今となっては思い出せない。

 パトロールをしていたとき、ある親子と出会った。
 赤ちゃんを連れたお母さん。とても優しくて暖かくて…。
 もし、俺の母親が生きていたら、こんな風に可愛がってくれたのかな、と見つめていた。
 そこへ、ヤツが現れたのだ。
 
 レーザーホーク。

 ヤツは赤ちゃん―ジュンちゃん―のお母さんに催眠をかけ、ジュンちゃんから引き離してしまった。
 目の前で起きたことにも関わらず、俺にはなす術がなかった。

 ヤツは片っ端から生後間もない赤ちゃんを持つ母親に催眠をかけて引き離し始めた。
 そして、赤ちゃんの代わりに得たいの知れない卵を抱かせていた。

 俺はレーザーホークが許せなかった。

 「子どもには母親が必要―。」

 子どもの頃、俺の周りの大人たちが言っていた言葉がオーバーラップする。
 全てを肯定するつもりはないが、有尾人なんかに母親を奪われてなるものか。
 何とか、お母さんたちを連れ戻さなければ…。
 俺が取った行動は、星川たちを戸惑わせてしまったようだ。
 そして、夢野博士から星川たちに俺の母親のことが語られたそうだ。

 夢中でレーザーホークに捕まった。逃がしてなるものか…!
  俺は必死だったが、敵の方が圧倒的に優勢なのは事実だった。
 俺は、山小屋の上に叩き落された。
 だが、幸いにもその山小屋に潜んでいたジュンちゃんのお母さんと再会できた。
 お母さんと話しているうちに、俺は母親の強さというものを教えてもらった。
 何が何でも子どものところへ戻ろうとするその姿に、俺は打たれた。
 レーザーホークを引き付けて、お母さんをジュンちゃんのところへ向かわせるのにもためらいはなかった。

 体中、ボロボロになりながらも、レーザーホークが孵化させようとしていた大量の卵を見つけたとき、
 俺の中で何かがはじけた。
 「こんなものの所為で…!」
 俺は片っ端から卵を割った。
 当然のように、敵が俺を急襲してきた。
 体が思うように動かせない。もうダメか…。
 そう思ったとき、仲間たちに救出され、レーザーホークを倒すことができた。

 夢野博士から、星川たちに母親のことを話したということを聞かされ、俺は発明センターのドアを開けるのが怖かった。
 どういう反応をされるのだろうか?また子どもの頃の繰り返しになるのだろうか?

 いくら逡巡していても仕方がない。
 思い切ってドアを開けた。
 「あ、お帰り〜」
 そこには、いつもと変わらない笑顔の仲間たちがいた。
 レーザーホークに受けた傷の具合を尋ねられた以外は、何も聞かれないし言われなかった。
 いささか拍子抜けした気分もあった。一体、俺は何を恐れていたのだろう?
 哀れみの言葉をかけられるのがイヤだっただけかもしれない。

 俺と同じ気持ちにさせる子どもを作ってはならない―。
 俺は改めて決心した。
  


 舞台背景は、第39話「抱け!有尾人の卵」。
 このエピソードで弾さんにお母さんがいないことが語られたわけですが、
 実は、肉親に関する話が出たのって弾さんだけなんですよね。
 ダイナマン放映当時の83年は、まだまだ「二親揃ってなきゃ」、という時代だったのではないかと思います。
 今は必ずしもそうとは限らないので、「子どもには母親が必要―。」と言う言葉に対して、
 「全てを肯定するつもりはない」と書いてみました。
 それにしても、本編部分、このままエピガイにできそうだ(笑)


 

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